落ち葉の温もりから生まれる、
GREEN FIELD FLOWERSの花たち
有機農業の里として知られる埼玉県比企郡小川町。この地で、自然のサイクルに真っ向から向き合い、生命力あふれる花を育てているのが「GREEN FIELD FLOWERS(グリーンフィールドフラワーズ)」です。
今回お話を伺ったのは、代表の髙橋愛さん。もともとは都心で働き、農業とは無縁の生活を送っていた愛さんが、なぜ「無農薬の花」という、日本ではまだ稀有な道を歩むことになったのか。その裏側には、地域の資源を余すことなく使い切る、徹底した「循環」の物語がありました。

「お花って、野菜よりずっと繊細」
きっかけは、20年以上この地で無農薬野菜を作ってきた夫・知宏さんのもとに、三重県からある「堆肥の先生」が訪れたことでした。その先生は、野菜作りの傍らで有機の花を育てており、「こんなに美しいのになぜ誰もやらないんだ」と熱く語ったそうです。
「当時、私は都内まで片道2時間かけて通勤していました。地元で仕事を探していたタイミングで、主人が『お花なら野菜とは別の分野だし、やってみたら?』と背中を押してくれたんです」
しかし、いざ始めてみると野菜との違いに驚かされる日々。種の発芽一つとっても、お花は驚くほど繊細でした。手探りの中で愛さんが出会ったのが、アメリカ西海岸から始まった「スローフラワー」のムーブメント。シアトル近郊の花農家のオンライン講座を受け、英語で栽培技術やビジョンを学び、日本流にアレンジしながら独自のスタイルを築き上げていきました。

落ち葉と微生物がつくる「温床」の魔法
GREEN FIELD FLOWERSの最大の特徴は、その土作りにあります。肥料を外から買ってくるのではなく、地元の山の落ち葉を拾い、堆肥にして畑に戻す。そこには、夫・知宏さんが幼少期から抱いていた「未来の地球に負荷をかけたくない」という強い想いが流れています。
特にユニークなのが、冬の苗作りで行われる「踏み込み温床(おんしょう)」です。
「電気で温めるのではなく、落ち葉と米ぬかと水を混ぜて、ひたすら足で踏み固めるんです。すると微生物が活発に動き出し、中が60度くらいまで熱くなります。その熱をベッドにして、苗を温めてあげるんです」
使い終わった温床の落ち葉は、2~3年後にはサラサラの豊かな土に変わり、また次の苗を育てる土になる。エネルギーを外から持ち込まず、地域の中でぐるぐると回していく。そんな「江戸時代から続く知恵」が、現代の花作りに息づいています。

なぜ「無農薬の花」なのか
「お花は食べないのに、なぜ無農薬にこだわるの?」という問いに対し、愛さんは「健康」と「環境」の二つの側面から答えてくれます。
-
健康の視点
化学物質に敏感な方やアレルギーを持つ方でも、安心して家の中に飾れること。また、レストランなどの空間でも、食の安全と同じ基準でお花を選べること。 -
環境の視点
観賞用であるがゆえに、野菜以上に規制なく使われる農薬、化学肥料の負荷を止めること。
「スパルタ」で育つからこその強さと鮮やかさ
GREEN FIELD FLOWERSの花をひと目見た人は、その色の鮮やかさと、驚くほどの「持ち」の良さに驚くといいます。その秘密を、愛さんは「スパルタ教育」と笑って表現します。
「ビニールハウスの中で、ちょうどいい気温と栄養を常に与えられて育ったお花は、外の世界に出ると弱くなってしまう場合があります。うちは苗の時から、わざと少し乾かし気味にする。すると、お花は必死に根を伸ばして、生きようとするんです」
厳しい自然環境の中で自らの力を信じて根を張った花は、都会の家の中に届けられたあとも、その逞しさを失いません。まるで野生のエネルギーをそのまま閉じ込めたような、凛とした美しさが宿っています。

当たり前の日常を、愛おしく
オランダのことわざに「パンを2つ買うお金があったら、パンを1つと花を買う」という言葉があります。
「ただそこに花があるだけで、ご機嫌になれる。特別なことではないけれど、そんな豊かな毎日のお手伝いができれば」と語る愛さん。
自然を支配するのではなく、移ろいに身を委ね、地域とともに生きる。GREEN FIELD FLOWERSが届けてくれるのは、単なる美しい花ではなく、その背景にある「命の循環」そのものなのです。
GREEN FIELD FLOWERS
所在地:埼玉県比企郡小川町
主な花:季節の草花(ダリア、ジニア、コスモスなど、その時期に最も輝く花々)
栽培方法:無農薬・無化学肥料栽培
公式サイト:https://www.greenfield-flowers.com/
撮影日:2025.11